2013年度(第4回)HODIC鈴木・岡田記念賞



HODIC鈴木・岡田記念賞 選考委員会報告

選考委員長 吉川 浩(日本大学)

2013年度HODIC鈴木・岡田記念賞選考委員会は,2014年4月8日に開催した委員会にて慎重に審議を行い,2013年度HODIC鈴木・岡田記念賞として以下の3名の方を選考しました.後日幹事会において承認され,授賞が決定しましたのでここにご報告致します.


   


●技術部門賞(1) : 高木康博氏(東京農工大学)

授賞理由:ホログラフィックビデオディスプレイおよび光線再生3次元ディスプレイの新方式の提案を多数行い,試作装置によりその有用性を示すなど,この分野での多年にわたる活躍が評価された.

対象論文:HODIC Circular Vol. 34, No.1. pp. 2-7 (2014)
 

●技術部門賞(2) : 中原住雄氏(関西大学)

授賞理由:半導体リソグラフィ用のレーザプロッタをホログラム出力用に改造し広視野,高画質の大型計算機合成ホログラム出力したことと,CGH研究者の製作支援を行う点が評価された.

対象論文:HODIC Circular Vol. 34, No.1, pp. 8-11 (2014)
 

●特別賞 (海外協力) : 康 コ寛氏(T-Security Inc.)

授賞理由:台湾において3回行われたHODIC in Taiwanに対し,知人の会社を通じて後援を行い,研究会および国際交流の成功を後押しした.

 



受賞者のプロフィール

 

技術部門賞: 高木康弘氏(東京農工大学)

【抱負】

栄誉あるHODIC鈴木・岡田賞の技術賞を頂き、ありがとうございます。2008年度に当時大学院生だった岡田直也君といっしょに技術部門奨励賞を受賞したのにつづき、2度目の受賞で大変ありがたく感じております。思い起こせば、私の博士論文のテーマが「ホログラムを用いた光ディジタル処理に関する研究」で、20年以上、いろいろな形でホログラムに関われてきたことをとても幸せに思っています。これからも、受賞に恥じないように研究に邁進したいと決意を新たにしております。

【略歴】

高木康博(たかき やすひろ)

1988年3月 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了
1988年4月 イーストマンコダックジャパン研究開発センター
1991年4月 早稲田大学理工学部 助手
1992年3月 早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了 博士(工学)取得
1994年4月 日本大学文理学部 専任講師
2000年10月 東京農工大学工学部 助教授
2013年12月 東京農工大学工学研究院 教授

【研究分野】
ホログラフィー、計算機合成ホログラム、超多眼表示、裸眼立体ディスプレイなど

【研究業績】
  1. Y. Takaki and K. Ikeda, "Simplified calculation method for computer-generated holographic stereograms from multi-view images," Opt. Express, vol. 21, no. 8, 9652-9663 (2013).
  2. T. Kurihara and Y. Takaki, "Speckle-free, shaded 3D images produced by computer-generated holography," Opt. Express, vol. 21, no. 4, 4044-4054 (2013).
  3. Y. Takaki and M. Yokouchi, "Accommodation measurements of horizontally scanning holographic display," Opt. Express, vol. 20, no. 4, 3918-3931 (2012).
  4. T. Kurihara and Y. Takaki, "Shading of a computer-generated hologram by zone plate modulation," Opt. Express, vol. 20, no. 4, 3529-3540 (2012).
  5. T. Kurihara and Y. Takaki, "Improving viewing region of 4f optical system for holographic displays," Opt. Express, vol. 19, no. 18, 17621-17631 (2011).
  6. Y. Takaki and J. Nakamura, "Zone plate method for electronic holographic display using resolution redistribution technique," Opt. Express, vol. 19, no. 15, 14707-14719 (2011).
  7. Y. Takaki and M. Yokouchi, "Speckle-free and grayscale hologram reconstruction using time-multiplexing technique," Opt. Express, vol. 19, no.8, 7567-7579 (2011).
  8. Y. Takaki, M. Yokouchi, and N. Okada, "Improvement of grayscale representation of the horizontally scanning holographic display," Opt. Express, vol. 18, no. 24, 24926-24936 (2010).
  9. Y. Takaki and N. Okada: "Reduction of image blurring of horizontally scanning holographic display," Opt. Express, vol. 18 no. 11, 11327-11334 (2010).
  10. Y. Takaki and Y. Tanemoto, "Modified resolution redistribution system for frameless hologram display module," Opt. Express, vol.18, no.10, 10294-10300 (2010).
  11. Y. Takaki and Y. Tanemoto, "Band-limited zone plates for single-sideband holography," Appl. Opt., vol.48, no.34, H64-H70 (2009).
  12. Y. Takaki and N. Okada, "Hologram generation by horizontal scanning of a high-speed SLM," Appl. Opt., vol. 48, no. 19, 3255-3260 (2009). 
  13. Y. Takaki and Y. Hayashi, "Elimination of Conjugate Image for Holograms Using a Resolution Redistribution Optical System," Appl. Opt., vol. 47, no. 24, 4302-4308 (2008).
  14. Y. Takaki and Y. Hayashi, "Increased horizontal viewing zone angle of a hologram by resolution redistribution of a spatial light modulator," Appl. Opt., vol. 47, no 19, D6-D11 (2008).
その他

技術部門賞: 中原住雄氏(関西大学)

【コメント】

Holography 関連では、特に名誉ある HODIC 鈴木・岡田記念賞の技術部門賞を戴き有難う御座います。レーザ及びホログラフィの研究を始めて( 学生時代を含めて)40 年以上となりました。まだまだ,研究において解決中もしくは未解決のテーマは多数あり,やることは山ほどあります。これからはホログラフィ界に活躍されている皆様あるいはこれから取り掛かられる若い研究者やホログラファーの皆様に少しでも貢献していきたいと思っています。

【略歴】

中原 住雄(なかはら すみお)

1974年 3月 関西大学大学院工学研究科機械工学専攻 修士課程修了
1974年 4月 関西大学助手(工学部機械工学科勤務).現在,同大学准教授
1993年 9月〜1994年 8月 米国ワシントン州立大学Adjunct Professor
1995年 4月〜現在  レーザ加工学会 理事, 編集委員

【研究分野】
計算機合成ホログラム作製,ディスプレイホログラフィ、3Dマイクロパターンの作製、など

【研究業績】
  1. 中原住雄: “レーザリソグラフィを用いた広視野角と視域拡大CGHの作製”, HODIC Circular, Vol.34 No.1, pp.8-11 (Mar. 2014) 
  2. S. Nakano, S. Nakahara: “Fabrication of the multi-level phase type hologram for display using the laser direct write lithography system”, Practical Holography XXVI: Materials and Applications, San Francisco, SPIE Proc. #8281, 828116(2012.1.25).
  3. K. Matsushima, S. Nakahara: “Extremely High-Definition Full-Parallax Computer-Generated Hologram Created by the Polygon-Based Method”,Applied Optics, 48, H54-H63 (2009)
  4. K. Kondo, S.Nakahara, K. Matsushima: “Fabrication of DOE Using Laser Direct Write Lithography System and CGH Technique”, Proceedings of LPM 2009, (2009)
  5. 中原住雄:“計算機ホログラムを用いた大規模再生像の形成 〜地下トンネル内の道路標識への応用〜”, 光アライアンス, Vol, 19, No.6. 27-32 (2008)
  6. T. Tsuchitani, H. Tottori, S. Nakahara: “The Formation of Large Scale Reconstructed Images through the Use of Holograms”, Optical Review,Vol.15, No.1,44-50 (2008)
  7. S. Nakahara, J. Nakaichi , T. Kawahara: “Fabrication of large CGH using direct write lithography system”, HODIC Circular, Vo.l. 25, No.4 , pp.8-11, Nov., 2005
  8. S. Nakahara: “Holographic optical element for laser soldering”, Second International Symposium on Laser Precision Microfabrication, Proceedings of SPIE Vol. 4426, pp.135-138 (2002)
  9. 中原住雄:”原子間力顕微鏡を用いたホログラフィックレンズの表面観察”, 技苑, (1996)
  10. S. Nakahara: “Surface Properties of Holograms Studied by Atomic Force Microscopy”, Fifth International Symposium on Display Holography, Tung H. Jeong, Editors, Proceedings of SPIE Vol. 2333, pp.49-52.(1995)

特別賞(海外協力): 康 コ寛氏(T-Security Inc)

【コメント】

 この度、特別賞(国際協力)を頂くことなりとても光栄に思います。
 故郷の台湾を離れて、日本 、そしてアメリカニューヨークでそれぞれ十五年との分水嶺に立ちました。この三十年、恩師の方々、元の上司からの大きな支えがなければ生き残ることはできなかったと実感しております。
 日本と台湾のホログラフィー情報の交流は1992年ごろから始まったという記憶が残っております。その時、元上司の岩田さんと一緒に休暇を利用して講演や訪問との形を通して交流を行っていました。ホログラフィー討論会を開いたり、大学の研究室及び会社の技術者との間に一定の交流成果を収めたと思います。1995の夏頃、MITのベントン先生と岩田さんと共に台湾の新竹に所在する工業技術研究院で開催した三日間のホログラフィーシンポジウムは今でも鮮明に覚えております。このようにして、台湾の関係者にとってHODICの存在や趣旨はとても親しみを感じるものになったと思っております。
 その後、私は家庭の都合でアメリカへ渡り、それまでとは全く異なった文化圏でのサヴァイヴゲームに精一杯でした。仕事の内容はやはりホログラフィーですが、台湾と日本の間の繋がりが少なくなってしまいました。滄海桑田の激しい変化の中に何とか生き残っていられるのは日本の皆様のお蔭だと言っても過言ではないと感謝の気持ちです。友人のT-Security Inc. の社長・蘇宏洋先生は私の気持ちを十分理解して数回HODICへの心ばかりの支援をしてくださいました。なにかの力になれば幸いです。
 この機会を借りて個人能力不足をお詫びしたい事と共に、長い間の感謝の気持ちを表せていただきます。

【略歴】

康コ寛 (カン トク カン)

1956年12月25日 台湾,屏東県生まれ (Taiwan)
1987年3月 京都工業大学修士 (Japan)
1991年3月 東京工業大学物理情報工学博士課程終了 (Japan)
1991年4月 凸版印刷株式会社 総合研究所 研究員. (Japan)
1996年4月 American BankNote Holography(ABNH), Research Scientist. (USA)
2001年8月 Technical Consultant of ABNH(USA) and T-Security Inc. (Taiwan)
2005年8月 T-Security Inc, Director of R&D center in New York (USA)
2008年8月-present. Board Member of T-Security Inc. (Taiwan)



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