1996年度(第3回)HODIC鈴木正根賞


技術部門賞: 西原 隆氏 34歳
      (凸版印刷(株)総合研究所 筑波研究所)

選考理由:カラーホログラフィの研究に関して、記録材料の特性評価、再生像の色 再現についての優れた研究を行なった。 その成果は質の高いディスプレイ用ホログラムを作製する際の指針となり、ホログラフィックディスプレイの発展に寄与し得るものである。

芸術部門賞: 小林亮介氏 42歳
      (名古屋造形芸術大学 美術学科)

選考理由:作品の製作を始めて年月が浅いにもかかわらず、特に最近のレベルの向上は著しく、芸術性の高い作品を発表している。 今後の活躍とともに、ホログラフィに関心をもつ若い芸術家を育ててゆくための貢献も期待できる。

選考経過報告


                                         選考委員会 委員長  久保田敏弘

鈴木正根賞選考規程(HODIC Circular 1994, No.3,p.2)に基づき、平成9年4月
16日(水)に同賞の選考委員会を開催いたしました。選考委員11名にて慎重に
審査を行なった結果、全員一致で'96年度HODIC鈴木正根賞は下記の2名が最
もふさわしいという結論に至りました。この結果をHODIC幹事の皆様に報告しました
ところ、皆様に異論はなく正式に決定いたしました。ここに発表させていただきます。

                                     記

委員会での選考経過 
 
技術部門賞に関しては、優れた成果を挙げている3つの研究(4名の候補者)に絞
られ、研究環境、年齢、将来性など様々な角度から検討がなされた。いずれも受賞
に値する研究を行なっており甲乙つけがたいが、西原隆氏の研究はディスプレイ用
ホログラムの品質向上を目指しており、鈴木正根氏の遺志にそったホログラフィッ
クディスプレイの発展に寄与し得るとの理由で、同氏にすることを出席者全員一致
で決めた。 
 
芸術部門に関しては、候補者は2名に絞られた。作品製作および発表の積極性、年
齢、作品の質、将来性などについての議論がなされた。特に、候補者の一人(小林
亮介氏)は現在42才であり、年齢についての意見交換がなされた。年齢の点で同
氏が認められない場合は、該当者なしとしたいこと、また作品のレベルを落とした
くないこと、などの意見が芸術関係の選考委員からあった。議論の結果、規定では
35才以下となっているが、生理的な年齢で決めるのではなくホログラフィの研究
を始めてからの年数を考慮し、これが短くてかつホログラフィックディスプレイに
熱意をもち、優れた研究、仕事をしている人も選考の対象に入れるべきであるとの
点で意見が一致した。また、ホログラフィに関心をもつ若い芸術家を育ててゆくた
めの貢献も期待できることから小林亮介氏に決定した。
 年齢制限の緩和については 
'94年度(第1回)の選考委員会での議論の結論とも一致している。また顧問をお
願いしている辻内先生からも同様のコメントをいただいている。
 
今回の選考委員会では、次のような事についても議論した。
 
選考対象の範囲を拡げてはどうかとの意見がでた。芸術部門ではデザイン関係、技
術部門では光学素子関係などの研究も含める。この点については、現在でも同じ土
俵で議論・選考されているが、どちらかといえば鈴木正根氏の遺志にそって芸術、
ディスプレイの分野に重きが置かれている傾向にある。次回からこの賞がHODI
C鈴木・岡田賞となるのを契機に、年齢制限、対象範囲など規約改訂も含めて議論
を行なう必要があることで意見が一致した。
 
また、年齢制限緩和に関連して、選考委員の人選を慎重に行なわなければならない
ことが指摘された。現選考委員のなかでも賞の対象になりうる人があり、これらの
人は外す必要があること、委員としてはホログラフィに十分経験のある人、意見を
述べ得る人が適当であるなどの意見がでた。
 
なお、次回の選考委員会の委員長には谷口幸夫氏(大日本印刷(株))が決まった。

                                                                          
                                                                     以 上


受賞者のプロフィール
技術部門: 西原 隆 昭和37年8月27日生まれ 経歴  昭和61年3月 広島大学理学部物性学科 卒業  昭和61年4月 凸版印刷(株)入社  平成5年4月 〜 平成7年3月       京都工芸繊維大学電子情報工学科 研究生  現在 凸版印刷(株)筑波研究所 勤務 研究業績 1)西原隆,久保田敏弘,”リップマンカラーホログラム再生像の色変化に関する研究", 光学,Vol.25,No.6(1996)329-336 2)西原隆,久保田敏弘,岩田藤郎,”リップマンカラーホログラムにおける再生照明 光の角度変化に対する再生色変化”,第2回HODIC講演会講演論文集(1995)19-23 3)西原隆,藤見昌延,久保田敏弘,”ロシア製乾板(PFG-03)を用いたカラーホログラ ムの作製”,ホログラフィックディスプレイ研究会会報,No.1,(1995)7-12 4) Takashi Nishihara, Atushi Sato,and Fujio Iwata,"Full color Lippmann hologram", Proc. SPIE Vol. 1732(1992)405-410 5)西原隆,久保田敏弘,岡本秀樹,上田裕昭,”コンパクトなホログラム再生装置”, ホログラフィックディスプレイ研究会会報,No.4(1994)2-7 6)西原隆,久保田敏弘,”ホログラフィックグレーティングを用いたコンパクトなホ ログラム再生装置”,3次元画像コンファレンス’95講演論文集(1995)19-23 7)久保田敏弘,西原隆,”コンパクトなホログラムの再生装置”,画像ラボ Vol.6  No.6(1995)19-21 8) Hideki Okamoto, Hiroaki Ueda, Kenji Taima, Eiji shimizu, Takashi Nishihara, Fujio Iwata, and Toshihiro Kubota,"A compact display system for hologram", Proc. SPIE Vol. 2333(1994)424-428 今後の抱負 現在、高品質なリップマンホログラムを安価に作製していくための技術について検 討しています。リップマンカラーホログラムなどの体積型ホログラムを、エンボス ホログラムと同じように色々な用途に気軽に利用できるようにしていきたいと考え ています。
受賞者のプロフィール
芸術部門: 小林亮介 1955年 神戸市生まれ 1981年 東京芸術大学美術学部油画卒業 1983年 同大学院修士課程修了 1986年 同大学院博士課程満期退学 1986-90年 DAAD (ドイツ学術交流会)給費留学生としてドイツ、デュッ セルドルフ芸術アカデミー留学、ギュンター・ユッカーに師事 1990年 帰国、名古屋造形芸術大学に就職 1994年 筑波大学芸術学系にてホログラフィー内地研修 現在、名古屋造形芸術大学講師 グループ展 1980年 「UENO '80」東京芸術大学展示室、上野、東京 1980年 「Each One of 5」神奈川県民ホールギャラリー、横浜 1981年 〜 1984年 16回のグループ展(横浜、東京、仙台、山形) 1985年 スクウォッターズハウスギャラリー我孫子、千葉 1987年 Rundgang展 デュッセルドルフ芸術アカデミー、デュッセルドルフ、 ドイツ 1988年 Rundgang展 デュッセルドルフ芸術アカデミー、デュッセルドルフ、 ドイツ 1989年 Rundgang展 デュッセルドルフ芸術アカデミー、デュッセルドルフ、 ドイツ 1994年 フランスホログラフィー美術館展、新宿NSビル、東京 ※ 1996年 ホログラフィック・アニュアル'96展 ギャラリー中沢、銀座、東京 ※ 1996年 レクイエム展 川口現代美術館、川口、埼玉 ※ 1996年 ピースメッセージ展 Art Space ZOOM 渋谷、東京 ※ 1996年 日韓立体造形の交流展 名古屋市民ギャラリー、名古屋 1996年 ホログラフィー・アートの世界展 天保山現代館、大阪 ※ 1997年 ホログラフィック・アニュアル'97展 ギャラリー中沢、銀座、東京 ※ 1997年 パラ・パラ・パララックス展 ギャラリーNWハウス、西早稲田、東京 ※ 個展 1981年 神奈川県民ホールギャラリー、横浜 1981年 ギャラリーパレルゴン、神田、東京 1982年  田村画廊、神田、東京 1983年 ギャラリーASG 名古屋 1983年 駒井画廊、神田、東京 1985年 ときわ画廊 、神田、東京 ※はホログラフィー作品を出品した展覧会です。 抱負 ホログラフィーをさらに勉強し、制作してゆくつもりだが、同時に、インスタレー ションなど、他のメディアでの制作活動にも力を入れたい。また、ホログラムを使 ったインスタレーション作品、映像作品とのミックス等も考えたい。

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